2008年2月19日火曜日

心霊 写真

心霊写真

日本の古い心霊写真というと、念写実験の話が知られている。しかし明治から大正にかけて心霊写真は、ほとんど現代と同じような因縁話を生み、はたまたエンタテインメントの有力なアイテムともなっていた。昨今の流行と思われがちなことにも歴史がある。膨大な一次資料を駆使しながら、心霊写真という装置に込められた意味を探り、日本の心霊研究史を書きかえるとともに、闇の近代史を鮮やかに炙り出した本である。

怪談話や都市伝説の背後に見え隠れする歴史的事実を調べ、その由来や変遷を明らかにすることで「怪奇探偵」の異名をとる著者。明治の「妖怪学者」井上円了や、「念写実験」で有名な福来友吉といった研究者の著書、あるいは新聞・雑誌に至るさまざまな文献を渉猟しながら、日本で最初に写真撮影が行われた幕末から現代までの約120年間を、心霊写真を軸に構築していく「日本心霊写真史」である。 その意図するところは、現像ミスやトリックであることが「明治十年代には、日本でもすっかり正体が判明していた」にもかかわらず、なおも現代まで生き続ける心霊写真に、「日本人の精神的な特徴」を見いだすことができる点だ。日本最古の心霊写真が撮影された時期や、「心霊写真」という言葉が初めて使用された時代を特定していく姿勢は、常に冷静である。ただ、「写真の投稿」「鑑定」「供養(処分)」といったシステムが登場した昭和末期から、メディアによる「いい加減な」心霊写真の扱われ方には、「いかがわしさすら失った」と憤りをにじませている点が印象深い。 本書が、福来など戦前の研究者たちの記述に多くのページが割かれているのは、たとえその研究や言動がいかがわしいものであっても、そこに彼らの真摯なまでの情熱を感じているからだ。心霊写真に振り回された人々に向けられる著者の視線には、彼らに対する深い慈しみがある。著者もまた、「古きよき時代」の情熱を継承するひとりなのだろう。(中島正敏)

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