星の数は主に、都立の大学の組織変更時の旧東京都立大学側のトップが改革について述べたものだという、著者の立場からくる価値からである。それ以外には読む価値はあまりない。石原都政下で行われた大学改革が少なくとも手続き上はムチャクチャであることはわかった。都から大学側に緘口令が出されたことや議論もなしに積極的に賛同しろと命じられたことなどは特筆に値するだろう。だが、改革の肝心な点に関してはほとんど触れられていない。大学に限らず改革を議論するときに絶対に外してはならないのは「行うべきかどうか」「行う場合と行わない場合でどちらがよいか」である。この肝心な議論を抜きにして石原都政への批判と旧都立大学(の上層部?)の擁護が行われている。そのため、はっきり言って読むに耐えない内容になってしまっている。正直言って「腹が立ったから書きなぐってみました」という印象を受ける。新大学の意義のうち都知事がマスコミで述べたものに触れていないこと、政治家や役人よりも教授のほうが大学を運営する能力に長けていると根拠無く仮定していること、労働者の権利を根拠にした改革批判が欠落していることなど、本書の内容に対してはいくらでも批判ができる。単に本書で伝える気が無いだけならまだよい。だが、大学側の認識が本書のレベルであるならば、それは都が「おしつけ」とも言える改革をやったことへの擁護の材料になると思う。
2003~04年度に東京都立大学総長を務めた、障害児教育学の分野で活躍する1942年生まれの教育心理学者が、2005年に刊行したブックレット。都立大学での改革の試みは1998年に開始され、独自の改革構想もまとめられていた。他方石原都政は、一面的なアメリカ理解をもとに、大学からさかのぼって教育全体を変える方針を持ち、経営に教学が従属する、産業活性化の為の新大学を目指し、2001年東京都大学改革大綱を策定し、4大学合併案を推進した。四大学と都は頻繁に会議を開き、改革大綱の具体化の在り方について協議を進めていた。2003年8月1日、都の大学管理本部は突如、大学との協議と改革大綱を共に廃棄する旨を一方的に通達し、従来の努力を全否定した。以後、設置者権限を口実に、審議は全くの密室で進められ、トップダウン方式が制度化されてゆき、法的根拠のない、都の方針への服従を強要する、口外禁止条項付きの同意書の提出すら、教員には要求された。都立大総長としての著者はこうした都の方針に正面から反論を行い(他の三大学からは反論少)、民主主義的な審議を要求し、大学内外からの大きな反響を得た。危機感をもった大学管理本部は、新大学のほかに現行の大学・大学院を当面継続運営する旨を通告し、反対運動の鎮静化と辞職者の阻止を図った。都は都市教養教育という意味不明な方針を打ち出した上、それを具体化しえないまま河合塾に丸投げし、結局は体制の整わないまま(COE研究拠点となった近代経済学グループは都と対立し、新大学には経営学コースしか設置されない!)、現場の大学教員の経験に依存する形で新大学を発足させざるを得なくなった。著者は当事者としてこうした経緯を公表し、石原都政を批判するのみならず、今後の大学のあり方、特にその地域貢献の在り方についての議論を呼びかけている。